○ジュールシーフ(乾電池一本でLEDを点灯する回路)を作る


■ジュールシーフとは

乾電池一本でLEDが点灯できます。
ジュール(エネルギー)シーフ(盗人)という意味ですが、泥棒とはちょっと違って
使い古しの電池の残ってる電気を使い切るまで取り出してLEDを点灯させようとする回路です。

はっきり言えば、1石ブロッキング発振回路なんですけど、ちょっと効率が良くて乾電池一本の電圧で白色LEDを点灯させる事が出来る回路です。
たとえば、低い電圧でもLEDを点灯できるため普通の機器では使えなくなった古い電池でもLEDが点灯しますよ。
目では見えないですがLEDは早い速度でついたり消えたりしています。

ただ、白色LEDが無いからといって赤色LEDなどをとりつけるとあんまり光らなくてがっかりします。
最初に作った時に黄色LEDをとりつけてボヤーとしか光らずに失敗かな〜と思ってた所、 白色LEDに交換したら明るく点灯してびっくりでした。
といって懐中電灯なんかに使われる(でかくてごつくて電気がめちゃめちゃ食いそうなナンタラルーメンとか書いてある超高輝度)LEDだと光りません。

結構長い間LEDが点灯できるもんですね、作った回路に単三電池を取り付けて放置しておいたら1週間ぐらいは点灯していました。
まあ、電池の内部抵抗によって大分変わるらしいですけどね。


■まずは元になる回路図

普通は抵抗が1KΩぐらいらしくコンデンサもいらないみたいですがこうしないと安定して動かなかったです
トランジスタによって変わるかもしれません
使ったトランジスタは2SC1815Yです、他のトランジスタでも大抵動きます。
気に入らない場合は他のサイトで調べてみてください。



■コイルの作成

1メートルぐらいの長さの銅線を用意してだいたい中央付近の絶縁をむきます
銅線が無かったのでラッピングワイヤーで代用
絶縁をむいた中央付近の銅線は後で電気を流せるようにねじっておきます。
銅線が短いとLEDが暗くしか点灯せずにちょっと残念な結果になります(なりました)



銅線をボールペンに巻きます、なにも考えず一定方向にただ巻くだけです。
こんなコイルでいいのか?という感じです。
もっとコイルらしいコイルを使いたいなら他のサイトを調べると沢山のってますよ。



■巻いたコイルを使ってこんなかんじに作ります



■まさかの空中配線で実際に作ってみた

コイルのなかも空っぽです。


乾電池一本で白色LEDが明るく点灯しました。


うまくいかなかった場合はコイルを変えてみたり抵抗値を変えてみてください。


■豆電球ぐらいのサイズになるようコンパクトにしてみる

コイルをエナメル線にして(長さは上と同じで)もっと小さく巻いて中にLEDを入れたりトランジスタの足を短くしたりして接着剤で固めて電球みたいにしてみました。


電池ボックスに取り付けたらペンライトみたいだね、でも点灯時間は一週間ぐらい。
知らない人ならびっくりさせられそうです。



■コイルのトロイダルコイル化

他のサイトを見るとコイルにトロイダルコイルを使ってるのをよく見ます。
そこで作成した回路のコイルを変えてみたいと思います。

名古屋大須のタケイムセンに行って適当なコイルを入手してきました。
100μH9Aと書いてある2cmぐらいのコイル
これで動くのか不安だがサイズ的にうまくいかなかったらコイルを巻きなおしやすそうだからとりあえず150円で入手しました。
でも値札を剥がすとその下には100円の文字が・・・・・・まあ気にしない気にしない、秋月電子の通販などで買うと送料が結構かかりますもんね(笑

コイルの真ん中あたりと思われる銅線のエナメルを剥いで電池が付けられるように半田付け
ほんとにだいたい真ん中ぐらいかな、テキトウです。
回路は上で作ったものです

電池を取り付けたら明るく点灯しました

いろいろいじっていて、回路のコンデンサをはずしても点灯しました。
さすがちゃんとしたコイルですね(笑)


■ 2SAトランジスタでジュールシーフ

2SC1815はNPNのトランジスタですけど、それとは逆のPNPトランジスタで作ってみたいと思います。
手元にあった2SA1015を使います。
まずはテキトウに回路図をいじります、上で使った回路図のトランジスタを取り替えて極性のある部品(LED)の向きを変えて、電源のプラスマイナスを入れ替えると出来上がり・・・・
ほんとに大丈夫か(笑
大丈夫です、大丈夫ですって。

二つの回路図を比較してみると違いがよくわかります。
ほとんど変わってません


■実際にはこんなかんじに作ろうと・・・・
相変わらずフリーハンドな絵ですな。




■ためしに作ってみた

ちゃんと動きましたよ、 ベース・エミッタ間電圧がNPN型だと約0.6V以上ないと動かないのに対してPNP型だと約0.55V〜0.58Vだから少しは低い電圧でも動くのかな?と思ったりしました。
そこで、0.47Fのスーパーキャパシタに乾電池で1.5Vを充電して、2SC1815と2SA1015でどちらが長く点灯するか時間を計ってみました。
2SA1015Y 145秒
2SC1815Y 125秒

手持ちの2SA1015のほうが約13%ほど長く点灯することがわかりました。
ジュールシーフはひょっとしたらPNP型を使ったほうがいいのか?と思いました
まあ、くわしくはよくわからないが・・・・・
解かる方がいたら教えてください。



■ゲルマニウムトランジスタでジュールシーフ

低い電圧から動作するらしいことからひょっとしたらもっと高性能なのができるかも? と思い立って作ってみることにしました
まずはPNPとNPNの二種類のゲルマニウムトランジスタを入手するために、 名古屋大須のボントンに行ってあったものをテキトウに結構いい値段で購入してきました。

2SD75  @420円
2SA201 @315円

ひょっとしてぼったくられてるかも?と思ったりします笑
ただ、部品にばらつきがあるのか、故障があるのか、2SD75は4個購入したうちの2個しかジュールシーフができなかったです。
後でテスターを使った簡易チェックをしたらhFEがばらついていたためでした。



■作るとしたらこんなかんじ

PNPトランジスタの回路をそのまま流用してゲルマニウムトランジスタに変更
NPN(2SC,2SD)を使う場合はLEDの向きと電源のプラスマイナスを入れ替えるだけです



■実際に作ってみた

ただ、古いものだからリード線がさびていてはんだが付かないです、
紙やすりなどで磨いてはんだ付けしないといけなかったです。
あと、熱に弱くて70度ぐらいで壊れるらしいので、はんだ付けはリード線を工具ではさんで放熱しながら作りました。



■性能を調べる

性能がどのくらいなのか測定するために0.47Fのスーパーキャパシタに乾電池で1.5Vを充電して接続し点灯時間を計ってみました。


まったく同じ部品で、各トランジスタの点灯時間は、

シリコントランジスタ
2SA1015Y 145秒
2SC1815Y 125秒

2SA1020Y 103秒
2SC2655Y 80秒

2N3904 140秒

金属のケースに惹かれて買ってしまった古いシリコントランジスタ
2SC994 170秒 ←ちょっと暗い
2SC943 118秒
2SA637 115秒

古いゲルマニウムトランジスタ
2SA201 109秒
2SD75 76秒

もっと最適なトランジスタがあるでしょうからなんともいえませんが・・・・・
トランジスタによってものすごいばらつきがあります。
やはり2SCより2SAのほうが点灯時間が長い気がします。
まあ、明るさを取るか点灯時間を取るかなのかもしれないなと思ったのでした。


■FETでジュールシーフ

FETも同じようなトランジスタだから動くはずと思い手元にあったMOSFETの2SK2232でジュールシーフを作ってみようと思い回路図を変更。
N型MOSFETだからNPNの回路を元にします。
トランジスタとFETの役割の同じ端子を入れ替えて回路図を書き換えます。
トランジスタ C   -   D FET
             B   -   G
             E   -   S



■作ってみたらこんな感じかな



■実際に作ってみた



2SK2232のジュールシーフは電池が消耗していると電圧がたりないため点灯しなかったです。
0.47Fのスーパーキャパシタを使って点灯させても約30秒しか点灯せず性能がいまいちでした。


■コイルを変えてみる

コイルによって性能がどのくらい変化するのか、それともあまり変化しないのか調べてみようと思いコイルを作成
左からトロイダルコイル、3メータの銅線を6ミリの紙に巻いたもの、2メートルの銅線を巻いたもの、1メートルの銅線を巻いたもの。


0.47Fのスーパーキャパシタに乾電池で1.5Vを充電して接続し点灯時間を計ってみました



トロイダルコイル1  (コア直径35ミリ 700μH        巻数 53+27回) 207秒
トロイダルコイル2  (コア直径20ミリ 100μH        巻数 50+30回) 150秒
トロイダルコイル3  (コア直径20ミリ 銅線長さ120cm  巻数 45回)    145秒
トロイダルコイル4  (コア直径5ミリ  銅線長さ6cm    巻数 16回)     64秒
3メートルの空芯コイル    (空芯6ミリ 銅線長さ300cm  巻数103回)     92秒
2メートルの空芯コイル    (空芯6ミリ 銅線長さ200cm  巻数 72回)     57秒
1メートルの空芯コイル    (空芯6ミリ 銅線長さ100cm  巻数 35回)     34秒
コイルによって性能がまったく変わってきています。
空芯コイルよりもフェライトコアのトロイダルコイルが圧倒的に点灯時間が長いです。
点灯するだけの回路なら1メートルの空芯コイルで動作するのですが高性能を求めるとコイルもいろいろ試行錯誤する必要がありそうです。


■コイルの真ん中の電極の位置を変えてみる

コイルの真ん中の電極の位置を変えると明るくなったり暗くなったりします。
いったいどの位置が一番明るいのか調べてみようと思います。
いわゆるこんな感じ。


明るさを調べるためにLEDに光センサーをとりつけました。
光センサーといっても太陽電池です。
フォトダイオードではLEDが高速で点滅しているため測定できませんでした

ちなみに↑のガラスは分解したゲルマニウムトランジスタ2SA201です。
ただ単に中身が見てみたかったため(笑
トロイダルコイルには29回コイルが巻かれています。


測定結果がこちら
コイルの一部(一応全部測定したけどね)を抜き出して明るさと0.47Fのスーパーキャパシタでの点灯時間を測定してみました。

コイルの位置 明るさ(太陽電池の電圧) コンデンサでの点灯時間
7 1.30v 24sec
9 1.36v 18sec
12 1.31v 24sec
15(中央) 1.29v 26sec

目視では9、10、11付近が一番明く判別が付かなかったです
でも、9が太陽電池の発電量が一番大きかったです。
大体9付近と言うことでしょうか

つまり1対2ぐらいの比率でコイルから線を出して回路を作れば明るくなるということだろうと思われます。
明るい分だけ電池の寿命が短くなるんですけどね。
ただ単に、トランジスタのベースに流れる電流が少なくなり、発振周波数が変化して明るさが変化しているだけの気がします。


■電池の電圧の推移

75000mcd 50mAのかなり明るめの白色LEDと2SC2655Yを使って電池の減り具合を調べてみました
コイルは20ミリのトロイダルコアに0.8mmの銅線をコンデンサ側10回巻き、トランジスタ側35回巻きの物を用意しました。
周波数が高いため明るいです。

上の部品はなるべく電池を早く消費させるためのチョイスです。
点灯日数が長すぎて測定がめんどくさいことになりますからね・・・・・
でもちなみに単三アルカリ電池一本で36日間も点灯しやがりました。うげっ
最後のほうはかなり暗い状態ですけどね。
一日に3回、電池の電圧を測定して日毎の平均でグラフを作成


こうやって見ると0.7Vぐらいが点灯できる限界みたいです。
他の回路でも0.7〜0.75Vぐらいで消えましたから。
でもそれ以下の電圧で点灯できるようにしても電池の電圧低下のカーブが急すぎてあんまり効果なさそうです。
ゲルマニウムトランジスタでがんばって少しだけ低い電圧で動いてもあまり意味が無いということかもしれません。


■とりあえずの今のところのまとめ

(トランジスタベース側) 1:2 (LED側) ぐらいの比率でコイルを巻くと消費電力も多く明るくなりました。
シリコントランジスタのPNPタイプ(2SA)を使うと少しは性能が上がるかもね?でした。
正しいかどうかは解かりませんが・・・・・

幾つか試行錯誤すると大体、空芯コイル銅線3メートルほど(トランジスタの頭に銅線を巻きつけて)の場合は新しい単三アルカリ乾電池で25日前後(明るく光るのは15日ぐらいかな)は連続点灯するようです。
古い電池では明るく点いて、新しい乾電池でLEDが暗く点灯する場合は抵抗で電流を制限するか、コイルの銅線を細くするか、コイルの真ん中の線をコンデンサ側(トランジスタのベース側)に持っていくと解消します。
トロイダルコアを使うともっと高性能になりますがライトとして使うにはサイズが大きく重くなります
上の実験でのトロイダルコアは36日間も連続点灯しました。

鉛筆などにコイルを沢山巻くと(1000回巻き、500:500で線を引き出す)抵抗が大きくなり電流が流れにくくなって一ヶ月ぐらいの連続点灯(明るいとは限らない)します。
しかし、アナログ時計のコイルやリレーなどのコイルみたいな、あまりにも沢山巻いてある物を使うと発振しなくなります。
長く点灯させるには、電池の電流を点灯しなくなる直前でいかに制限するかにかかってる気がします。


■コイルの取り出し位置による計測
コイルの取り出し位置により電池から流れる電流がどのように変化するのか計測してみました。
ちなみに電池の電圧は1.46Vでした。

コイルの巻き数は全部で38でLED側からの位置を1として計測しています。
位置 13        20mA
位置 14        19mA
位置 18        16mA
位置 21        13mA
位置 26        10mA
位置 28         8mA
位置 32         6mA
巻き線位置をLED側から離してゆくと消費電流が低下していくようです。

次に、巻き線位置を変更した時のLEDにオシロスコープを取り付けて発振周波数を測定しました。
10巻き目の場合、2MHz


18巻き目の場合、1.7MHz


28巻き目の場合、1.3MHz


巻き線位置をLED側から離してゆくと発振周波数が低下していくようです。

単 3 形アルカリ電池の容量は約 1,000 〜 2,900 mAhとの事なので、
電池が一番少ない容量だとして1000mAh
コイルの巻き数26の位置 10mA に電池を接続したとすると、
1000 / 10 = 100

電池が一番多い容量だと2900mAh
2900 / 10 = 290

100時間から290時間点灯するようです。
4日から12日間点灯するという事でしょうか。
でも実際には電池の電圧が低下していくためこのようには行かないと思います。


■電池の電圧による周波数と電流の変化
電池の電圧の違いによる、LEDの周波数と電池から流れる電流の変化を調べたいと思います。

1.54Vの電池を使用した場合の電流は13.6mAでした、その時の周波数は1.25MHzでした。


1.3Vの電池を使用した場合の電流は7.5mAでした、その時の周波数は1.65MHzでした。


1.0Vの電池を使用した場合の電流は4.5mAでした、その時の周波数は2.28MHzでした。


電圧が下がると周波数が上がり、電流は低下するようです。

2014/02/27更新
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